なぜ、あの商品は「売れる」のか?

ちょっと学んでみる 04

マーケティングの視点

前回取り上げた経営戦略は、「将来像とそれを達成するための道筋」というものでした。なぜ経営戦略を考える必要があるのかといえば、市場(社会)に対してどのような価値を、どのように生み出していくのかを考えるためでした。経営戦略を立てることで、お客さんに価値を提供するための道筋は示されることになります。

しかし、計画は行動へと移していかなければ、何も手に入りません。そこで、企業は具体的な活動の1つとしてマーケティングについて考えなければなりません。

マーケティングとは

マーケティングという名前自体は、皆さんも耳にしたことがあるかもしれません。

人によってマーケティングの定義に違いはあるのですが、ここではマーケティングという活動を概観するために「顧客にとって価値のあるものを提供するための一連の活動」だと考えます。

マーケティングの講義では、お客さんが買い求める商品やサービスを作り出して売ることを念頭に置いて「一連の活動」を構成する様々な活動や仕組みについて学びます。

マーケティング視点でユニクロを見る

では、企業の場合はどうでしょうか。ユニクロを例に、もう少しかみ砕いてマーケティングを考えて見ましょう。

ユニクロが私たち顧客に対して提供している商品は、フリースやヒートテック、エアリズムといった衣料品です。しかしながら、提供している「価値」という視点で考えると、ユニクロは衣服を提供していると考えるだけでは不十分です。たしかにインナーやアウターなどを提供していますが、衣料品であれば他にも提供するお店がたくさんあるからです。

では、他のお店と比べたときにユニクロが提供している「価値」は何でしょうか。品質に大きな不満を抱くことなく、リーズナブルな価格で衣服を提供するということに多くの人は価値を見いだしているのではないでしょうか。

このような価値を届けるために、ファッション業界が手がける多くの洋服とは異なり、素材調達、企画、開発、製造、物流、販売、在庫管理など、製造から販売までのすべての過程を一貫してユニクロが行っています。他の企業と取引が生じてしまうところを、自社で一貫して携わることでコストを削り、リーズナブルな価格で衣服を提供することを実現させ、品質などの面でもユニクロが主体的に関わることを可能にしています。同社が提供する「価値」を知ってもらう(あるいは思い出してもらう)ためにCMをテレビに流したり、毎週金曜日に新聞に折り込み広告を入れたりしています。

これらのユニクロの活動はいずれも広い意味でマーケティングに含まれるものです。

メールマガジンとスマホアプリ

もちろん、人によって感じる価値は違いますが、ターゲットとなる客層を想定して、その最大公約数が価値を認めるものを提供すべく、企業の側はマーケティングを行うのが一般的です。

ただし、近年は情報技術が発達した結果、一人一人のお客さんにより価値を認めてもらえるように働きかけることが可能になってきています。例えば、ユニクロに関心のある人がメールマガジンに登録すると、会員限定の割引クーポンが配信されます。また、ユニクロはスマートフォン向けアプリを準備しています。チラシの商品写真をスマホでスキャンするとその商品を購入した他のお客さんのレビューを見ることができたり、オンラインストアで購入できたりするだけではなく、実際のお店では気に入った商品のバーコードをスキャンすることで、その商品の詳しい情報を手に入れたり、店頭には置いていないサイズや色をオンラインで購入できるようWebと連携しています。

このように、「顧客にとって価値のあるものを提供する」ために、企業が行う一連の活動がマーケティングです。例としてユニクロをあげましたが、様々な企業がマーケティングを行っていますから、意識してみれば身近なところでもみつけられるはずです。経営学科での学びは、身の回りにあることを理解することにもつながるのです。

次回は、ビジネスにおける共通言語といわれる会計について取り上げて、経営戦略やマーケティングとは違った側面から企業活動を考えてみましょう。

 

次回:「会計はビジネスにおける世界共通言語」を読む