戦略とは何だろう?

ちょっと学んでみる 03

戦略について

前回、経営学とはどのような学問なのかという話をしました。その際に、お客さんにとっての価値を提供する対価として企業は利益を得るということを述べました。「価値を提供し、対価として利益を得る」と言うのは簡単ですが、実際には最終的な利益につながるような活動を行うために様々なことを考えなければなりません。

市場(社会)に対してどのような価値を、どのように生み出していくのかを考えなければその企業は利益を得ることが難しい状況に直面するでしょう。

「○○○大学に入る」というのは、目標であって戦略ではない

そこで、戦略というものを考える必要が出てきます。

戦略という言葉はその意味する内容が人によって異なることが多い言葉でもありますが、ここでは「将来像とそれを達成するための道筋」だと捉えましょう。

このように戦略を定義すると、単に目標を掲げ、スローガンを唱えるのでは戦略になりません。目標そのものは将来のありたい姿として必要なのですが、戦略として考えるべき主たる点は、その将来像を達成するための道筋です。

たとえば、「○○○大学に入る」というのは目標であって戦略ではありませんし、「○○○大学に入るために期末試験の英語で70点取る」も戦略ではありません。「○○○大学に入るためには、自分には英語の力が必要で、合格点に達するために英語で必要な点数を取れるように、朝起きてから2時間を重点的に英文法の学習にあてる」となると戦略です。

任天堂、ソニーのゲーム機戦略とは

では、企業の場合はどうでしょうか。

ゲーム機を作っている任天堂という会社を例にとって考えて見ましょう。

同社は「任天堂に関わるすべての人を笑顔にする」ことを目標として掲げていますが、これを実現するための道筋を考えることが経営上の戦略、すなわち経営戦略になります。

目的を実現していく方法は、企業が置かれた状況によって異なります。さらに選択肢としての道筋に唯一の解が必ずあるわけではありません。ゲーム機メーカーのライバルであるソニーやマイクロソフトが仮に同じような目標を掲げたとしても、必ずしも任天堂と同じことをするわけではありません。

たとえば、任天堂は直感的にゲームができるよう、操作性の簡素化という方法をSwitchで実現しました。Switchの前にWiiという据置型ゲーム機が販売されていますが、その時も同じように操作性の簡素化を考えていて、家族みんなで楽しめる「鍋のような存在」を目指したと関係者の1人は語っています。それに対し、ソニーのプレイステーション4は動画の速度や美しさという性能の高さに焦点を当てたゲーム機を提供し、後継のプレイステーション5ではネットワーク機能を強化しています。同じ据置型ゲーム機でも、目指す姿が異なるので、歩む道筋も異なるのです。

戦略に関する理論を学び、考える筋道を多様に持つ

経営戦略の授業では、なぜそのような筋道を選ぶのかという戦略の根拠となる理論を学んでいきます。たとえば、なぜ任天堂はWiiの開発という道を当時選んだのだろうかを考えると、差異化(差別化)がカギとなります。

もちろん、世の中を理解することは単純ではなく、複雑であり、利益をもたらす根源も様々です。しかし、戦略に関する理論を学び「定石」を知ることが、将来像を達成するための道筋をより深く考えることを可能にします。また、様々な理論を学び、考える筋道を多様に持つことで、利益の獲得へとつながる可能性を拓きます。経営戦略を学習することが利益を得るための道筋にヒントを与えるのです。

ただ、戦略さえあれば商品は放っておいても勝手に売れるというわけでもありません。

そこで、次回はユニクロを例に挙げ、マーケティングについて考えてみましょう。

 

次回:「なぜ、あの商品は「売れる」のか?」を読む