経営学は「金儲け」の学問なのか?

ちょっと学んでみる 01

経営学は、金儲けのための学問ではない!

受験生の皆さんは、経営学はどのような学問だと考えていますか?

経営=企業=お金儲けと連想するのは、ちょっと待ってください。

確かに、企業の収益性を高めることを追求するための知識を蓄積することは、経営学の重要なミッションの一つです。収益性を高めることは、お金を儲けることと言い換えることもできるかもしれませんから、経営学にお金儲けの要素が含まれることは否定しません

でも、経営学=お金儲けの学問と考えることは、間違っています。経営学では、お金を儲けることも大事にするし真剣に考えるけれども、それよりもっともっとたくさんのことを考えるのです。

どうして、ディズニーランドでお金をつかうの?

経営学部が拠点を置く武蔵野大学有明キャンパスは、1時間もかからずに東京ディズニーランドまで行くことができます。多くの学生が、授業後にわくわくしながらディズニーへ向かいます。教員から見ると「ちょっと浮かれすぎじゃないかな?」とい思ってしまうような服装で、授業を受けていることもあります。

武蔵野大学の学生たちがこうまで夢中になるディズニーランドやディズニーシーを経営するオリエンタルランという企業は、何十年にも渡って利益を出し続けている優良企業です。先ほどの言葉を借りれば、何十年にも渡ってお金を儲け続けている企業です。このように書くとなんだか少し嫌な印象にもなりますが、みなさんはそんな風に感じますか?

授業後にディズニーランドに急ぐ武蔵野大学の学生達は、そんな風には思っていないようです。とっても楽しそうにいそいそと教室を出て行って、夢の国を満喫し、たくさん写真を撮ってInstagramに投稿し、翌日にはお土産を友だちに配って「また行こうね」とにこにこしています。夢の国で元気になった学生達は、またキャンパスで学業に励みます。

こう考えると、オリエンタルランドはお金を儲けることと同時に、お客様を幸せにしていることがわかります。そう、実は、企業がお金を儲けるためには、お客様を幸せにしなければならないのです。ディズニーランドでお客様が幸せを感じるからこそ、何度も足を運んで、高い入場料を支払い、食事を楽しみ、お土産を買うのです。オリエンタルランドだけでなく、その他の多くの企業も、お客様を幸せにすることでお金を儲けているのです。

お客様も、企業も、従業員も、地域社会も、みんな幸せに

残念ながらお客様を騙して不幸にしてお金を稼ぐ企業も存在しないわけではありませんが、経営学ではそういう企業は良くないものと考えます。お客様も楽しいし、企業も対価を貰えて嬉しい、どちらも幸せなwin-winの関係を築くことを経営学では重視します。

でも、企業がお客様とwin-winの関係を築くためには、お客様のことだけを考えていてはいけません。これが難しいところです。

例えば、従業員のことを考えなければいけません。従業員が居なければお客様に幸せを届けることはできませんし、従業員が幸せでなければ質の高い接客を期待できません(態度の悪い店員さんにイライラしたことはありませんか?)。企業は、お客様から得たお金を、給料という形で従業員に分配します。

他にも、土地や設備を提供してくれる企業にも代金を支払う必要がありますし、材料や部品や製品を納めてくれる供給業者にも代金を支払う必要があります。税金も納めなければいけませんし、保険だって入らなければいけません。これらの支払いはぜんぶ、儲けたお金の中から出ていきます。

価値の連鎖を生み出せる組織を目指す、経営学

こうして、お客様を幸せにすることで儲けたお金を、従業員、企業、地域社会など、さまざまな人たちに分配していきます。この分配を通じて、いろいろな人たちがまた幸せになっていくのです。

さて、ここで平易な言葉遣いから専門的な言葉遣いに代えてみましょう。

これまでに述べてきた幸せや喜びのことを、「価値」と言います。企業をはじめとする組織は、価値を生み出すことで対価を得て、それを関係する組織や人々で分かち合いながら、次の価値を生み出すために働くのです。経営学は、価値の連鎖を巧みに生み出せる企業を、良い組織だと考えます。価値の連鎖を生み出せるような組織の巧みな運営について研究し、学ぶのが、経営学なのです。

 

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